大判例

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東京高等裁判所 昭和38年(う)1046号 判決

被告人 酒井啓 外一名

〔抄 録〕

職権をもつて按ずるに、原審第三回公判において原裁判所は証人榎本ハツ子が傍聴人の面前において十分な供述をすることができないとして傍聴人を退廷させる措置をとつているが、公判調書の記載によれば特定の傍聴人を退廷させたものとは認められないから、全傍聴人を退廷させたものと認めるの外なく、刑事訴訟規則第二百二条においては、少数の傍聴人がいてその全部が証人との関連において全員いわゆる特定の傍聴人として退廷させられ、その結果傍聴人が一時皆無となつた場合の如きは格別であるが、本件の如く特定の傍聴人と限定せず全傍聴人を退廷させ、事実上公開禁止をしたと同様の事態を招来させることは予想していないと認められるから、原裁判所の右措置は公判廷の公開に関する原則をみだるものとの疑があり違法の措置であるというべく、従つて右公判廷における右証人の証言は証拠能力を有しない筋合となるところ、原判決は右証人の証言のみならず、右証言に対し刑事訴訟法第三百二十一条第一項第二号の関係にある証拠としての右証人の検察官に対する供述調書を罪証の用に供しているのであるから、右証言にして右理由により証拠能力を失うに至るときは、右供述調書の証拠力も自然失われるわけであり、右両者の証拠を欠くときは、原判示事実の認定はできないのであるから、原判決にはこの点において少くとも証拠理由不備の違法があることとなるわけである。果して然らば、弁護人の所論について判断をするまでもなく原判決は破棄を免れない筋合であるといわなければならない。

(三宅 東 井波)

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